経済学(基本科目) ミクロ経済学 講義ノート

*市場のメカニズム [#l01f6124]
-ミクロ経済学の「基本」モデル
 ミクロ経済学は、ある仮想的な世界をイメージして、その世界で起こりそうなことを理詰めで考えていきます。

 この世界は現実そのものではありません。そのかわり、現実を理屈どおりに進まなくさせる、過去の事情や非経済的な関係(身分制度、知り合いへのひいきなど)がありませんから、現実よりも「わかりやすい」世界です。
-「財」と「サービス」
-零細多数の売り手と買い手
 りんごにはりんごの売り手と買い手、みかんにはみかんの売り手と買い手がいます。最初の売り手は農家、最後の買い手は家計(消費者)であったり、りんごを別のものの材料として欲しがる企業(例えば、りんごジュースメーカー)だったりします。ここではシンプルに、家計だけが最後の買い手だと仮定しましょう。

 たいていの財は、最初の売り手と最後の買い手の間に、誰かがはさまります。卸とか、小売店とか。その人たちは、最後の買い手がいくらならどれだけ買ってくれるか考えながら、りんごやみかんを買います。そしてその人たちは、品物を運んだり、きれいで快適な店の中に並べて買い手を待ったりするサービスをりんごやみかんにくっつけて売っていると考えられます。だからここでもシンプルに、その人たちを無視して、最初の売り手と最後の買い手がりんごやみかんを直接取引していると仮定しましょう。この仮定を、「''取引費用''がゼロだという仮定」と表現することもあります。

 売り手と買い手は、それぞれたくさんいて、ひとりひとりの取引に占める比率(シェア)は小さいと仮定します。これを「売り手も買い手も''零細多数''だという仮定」と表現します。

 シェアの大きい売り手がいたら、その人が決めた売値をほとんどの人が受け入れるしかないでしょう。たくさんの売り手がすこしずつ財を持っているなら、他の人より高く売ろうとしても誰も買わず、安く売ればすぐに売り切れてしまうでしょう。だから安定した状態では、どの売り手も同じ価格で財を売っているはずです。このことを「''一物一価の法則''」といいます。

-効用最大化と予算制約

 なるべく言葉遣いをシンプルにするために、「家計」「企業」という2種類の市場参加者だけを考えることにします。家計は財やサービスを買い、企業は(作って)売ります。逆に、財やサービスを作るために、企業は家計から労働を買ったり資本を借りたりして、賃金や利子を払います。賃金は労働サービスの価格、利子は資本を預けて使わせる資本サービスの価格だと思えばいいでしょう。

 家計は、自分の持っている予算を使って、なるべく満足するように財やサービスを買おうとします。例えばりんごとみかんに予算を使うとしたら、

りんごの価格×りんごの購入量+みかんの価格×みかんの購入量=予算

 を満たしながら、りんごとみかんから得る満足が一番大きくなるようにふたつの購入量を決めます。上の式を''予算制約(式)''といいます。

 家計の満足を数字にしたものを''効用''と呼びます。家計は予算制約の下で、''効用最大化''をします。

-利潤最大化と生産量決定、参入と退出

 皆さんも学園祭の模擬店などで、「ものを作って売る」経験があると思います。作ったものを売って得た''収入''と、材料代や従業員の賃金といった''費用''の差を''利潤''と言います。

利潤=収入−費用=生産量×価格=費用

 実際の企業は社会的信用とか従業員の幸福とかいろいろなことを考えますが、ここでもシンプルに、企業は利潤のことだけ考え、''利潤最大化''を行うと仮定しましょう。

「一物一価の法則」としてさっき簡単に書いたように、他の売り手がみんな100円をつけているとき、同じものを105円で売ってもお客は逃げますし、95円で売ったらすぐに売り切れてしまいます。自分の作るものが全体の取引量に対してわずかならば、他の人と同じ100円で自分の作ったものは売れるはずです。だから企業にとって価格は動かせないものです。費用はもちろん、その生産量を実現するための最小限に抑えるとします。そうだとすると、企業が変えられるものは生産量だけです。

 どう生産量を決めても赤字だ、ということもあるでしょう。そんなとき企業はその市場から''退出''して、その従業員や設備は他で使われます。逆に、利潤率が高ければ他から人や資本が集まってきて、その市場に新たな企業が参入します。


-(部分)均衡価格の決定
 家計と企業の両方が、例えばりんごの価格が1個100円のとき、自分の需要量(購入量)と供給量(販売量)を決めることが出来ます。たくさんの家計や企業について、それぞれを合計すれば、市場全体での需要量と供給量を求められます。

 需要量と供給量が一致しなければ、一致するように値上がりしたり、値下がりしたりするでしょう。例えば人気のないゲームソフトは中古市場でだぶつき、どんどん値下がりします。逆に人気ソフトの中古品は、新品の定価とほとんど同じ価格で売られていますし、新品ソフトもあまり値引き販売されません。

 需要量と供給量が一致する価格を、''均衡価格''と言います。

-労働の供給と需要

 先ほど、家計の予算は決まった額だと考えました。実際には皆さんは、欲しいものがあるときは余計に働いてもいいと思うでしょうし、お金を出してでも欲しいものがなければ、時間の余裕を持つ(財やサービスの代わりに余暇を消費する)ほうがつらいアルバイトよりいいと思うでしょう。逆に、たくさん売れると企業は人手が欲しくなるでしょう。このように労働にも需要と供給があり、それによって家計の予算も変わってきます。

-一般均衡(競争均衡)状態

 労働のように生産に使われる生産要素も含め、この世に存在する財やサービスそれぞれに需要と供給を考えると、たたひとつを除いて残り全部の価格が、「りんごの需要量=りんごの供給量」「みかんの需要量=みかんの供給量」というたくさんの方程式を満たすように決まります。たぶん。この大きな連立方程式がちゃんとした解(価格がマイナスになったら意味がありませんよね)を持つための条件は難しいもので、学部程度では習いません。

「ただひとつを除いて」というのは、ここで決まるのは交換比率だ、ということです。例えばりんごの価格がみかんの価格の1.5倍だとして、みかんを1個100円と決めればりんごは150円になるし、1ドルと決めればりんごは1.5ドルになる、というわけです。

 このように、すべての財やサービスの価格が市場で決まり、需要量と供給量が一致している状態を、''競争均衡(一般均衡)''が成立している、と言います。

-裁定とグローバリゼーション

 さて、市場メカニズムが理想的に機能した場合にどんな世界が実現するか、これで簡単に解説を終えました。このように、「売り手も買い手もすこしでも得をするように行動し、これ以上それぞれが得をする余地がなくなる」メカニズムのことを''市場メカニズム''と言います。「市場メカニズム(マーケットメカニズム)が働く」とは、たいていの場合、

--価格が下がる→減産や退出によって供給量が減る、需要量は増える
--価格が上がる→増産や参入によって供給量が増える、需要量は減る

 といった現象をいいます。

 しかし、地理的に離れた市場や、似たような財・サービスの市場の間でも、一種の市場メカニズムが働きます。市場同士で価格差が出来たとき、安いほうで買って高いほうで売り、差額を稼ぐことが出来ます。これを裁定行動といいます。

 1990年代以降、ソビエトと東欧が社会主義を捨てて世界市場に組み込まれ、中国も大幅な市場開放に踏み切って輸出を伸ばしたことをきっかけに、世界全体がひとつの巨大市場となるグローバリゼーションが進みました。世界各地から、今までには輸入したくてもできなかったものが輸入され、今までの代替品は買い手を失いました。このことには、良い面も悪い面もあります。経済学部の多くの講義で、グローバリゼーションの様々な側面に皆さんは出会うことでしょう。

*限界概念 [#p6a66d47]

-(総)費用=固定費用+可変費用
-限界費用
-限界費用と限界収入
-固定費用を無視することの意味

*均衡概念 [#j47607a9]

-完全競争均衡とナッシュ均衡
-機会費用


最後の1単位を生産するために、余計にかかった費用を限界費用といいます。

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