[[経済合理的行動]] *ゲーム論的状況 [#xa3a2545] -あなたが今日の通勤路を選ぶとき、それぞれのルートの所要時間や費用、そしてあなたの時間的余裕や懐具合を考えに入れるでしょう。特定の誰かの行動を考えなくても、たいていそれは決まるでしょう。 -しかし「早起きすれば家族に車で送ってもらえる」「誰かと待ち合わせて一緒に行く」といった、相手のある行動が含まれていたらどうでしょう。何かの理由で相手の行動が変われば、一番得な選択肢が変わったり、その選択肢が選べなくなったりするかもしれません。 -相手の選択によって、自分にとって一番いい選択が変わる状況をゲーム論的状況といいます。こうした状況を扱うのがゲーム理論です。 *個々のプレイヤーの行動と行動の「組み合わせ」 [#b83282c3] -例えばA社製品が100円で売られているとき、競合する製品を持つB社はどうするでしょうか。 --需要を一気につかもうと出荷価格を引き下げ、100円未満で需要家の手に渡るようにする? --市場の値ごろ感が100円だと見て100円程度になるようにする? --価格競争に巻き込まれることを避け、100円を超える価格で販売量が減っても気にせず、ブランドイメージを高めるためにお金を使う? --どれも、現実にありそうな話です。少なくとも、A社が価格を変えればB社も対応を考えなければならないことだけは確かですね。ゲーム論的状況では''個々のプレイヤーの選択ではなくて、プレイヤー全員の選択の「組み合わせ」を考えなければなりません。'' *解概念 [#h5ba555c] -ゲームの結果として、どんな行動の組み合わせがもっともらしいでしょうか。 -上の例だと、安い新製品・外国製品が急にシェアを伸ばしている市場、メーカー同士が値下げ競争を続けている市場、高級ブランドがいくつか確立して住み分けている市場、どれも堅実にありますね。「もっともらしい結果として受け入れる」基準を勝手に決めてやらないと、色々あるよね、で分析が終わってしまいます。勝手に決めるのだから、基準はいくつも出来そうです。 -経済学や経営学では、''ナッシュ均衡''やそのバリエーションが解概念としてよく使われます。 -お互いに、相手が行動を変えなければ、自分だけ行動を変えてそれ以上得をすることが出来ないとき、その行動の組み合わせはナッシュ均衡(あるいは単に均衡)であるといいます。 --例えば「高級ブランドメーカーがいくつか確立して一般メーカーと住み分けている状態」が均衡だというのは、「選択できるものが価格だけだとすれば、高級ブランドメーカーは価格を切り下げてもいま以上に利潤が増えず、一般メーカーも値上げをしてもいま以上に利潤が増えないので、互いに価格を変えようとしない」ということです。 *最適反応 [#qbc9e775] -均衡では、自分以外のプレイヤーの選択が今のままだとすれば、自分の選択はそれに対する「これ以上得する余地のない選択」です。このことを、自分の選択は残り全部のプレイヤーの選択に対する''最適反応''である、といいます。ナッシュ均衡が解概念であれば、その状況での各プレイヤーの経済合理的行動は、残り全部のプレイヤーの選択に対して最適反応をしてみせることです。 *ちょっと待った。 [#yf9b4006] -例えばある1ヶ月の各社の行動について考えるとしたら、価格を変える時期は月の初めでも途中でもいいはずだし、何度変えてもいいはずです。「行動の組み合わせ」といっても、それはいつの時点のことでしょう。そんな「組み合わせ」に意味はあるのでしょうか。 -例えばある1ヶ月の各社の行動について考えるとしたら、価格を変える時期は月の初めでも途中でもいいはずだし、何度変えてもいいはずです。「行動の組み合わせ」といっても、それはいつの時点のことでしょう。そんな「組み合わせ」に意味はあるのでしょうか。→[[意思決定の時期と期間]]