経済合理的行動

ゲーム論的状況

  • あなたが今日の通勤路を選ぶとき、それぞれのルートの所要時間や費用、そしてあなたの時間的余裕や懐具合を考えに入れるでしょう。特定の誰かの行動を考えなくても、たいていそれは決まるでしょう。
  • しかし「早起きすれば家族に車で送ってもらえる」「誰かと待ち合わせて一緒に行く」といった、相手のある行動が含まれていたらどうでしょう。何かの理由で相手の行動が変われば、一番得な選択肢が変わったり、その選択肢が選べなくなったりするかもしれません。
  • 相手の選択によって、自分にとって一番いい選択が変わる状況をゲーム論的状況といいます。こうした状況を扱うのがゲーム理論です。

個々のプレイヤーの行動と行動の「組み合わせ」

  • 例えばA社製品が100円で売られているとき、競合する製品を持つB社はどうするでしょうか。
    • 需要を一気につかもうと出荷価格を引き下げ、100円未満で需要家の手に渡るようにする?
    • 市場の値ごろ感が100円だと見て100円程度になるようにする?
    • 価格競争に巻き込まれることを避け、100円を超える価格で販売量が減っても気にせず、ブランドイメージを高めるためにお金を使う?
    • どれも、現実にありそうな話です。少なくとも、A社が価格を変えればB社も対応を考えなければならないことだけは確かですね。ゲーム論的状況では個々のプレイヤーの選択ではなくて、プレイヤー全員の選択の「組み合わせ」を考えなければなりません。

解概念

  • ゲームの結果として、どんな行動の組み合わせがもっともらしいでしょうか。
  • 上の例だと、安い新製品・外国製品が急にシェアを伸ばしている市場、メーカー同士が値下げ競争を続けている市場、高級ブランドがいくつか確立して住み分けている市場、どれも堅実にありますね。「もっともらしい結果として受け入れる」基準を勝手に決めてやらないと、色々あるよね、で分析が終わってしまいます。勝手に決めるのだから、基準はいくつも出来そうです。
  • 経済学や経営学では、ナッシュ均衡やそのバリエーションが解概念としてよく使われます。
  • お互いに、相手が行動を変えなければ、自分だけ行動を変えてそれ以上得をすることが出来ないとき、その行動の組み合わせはナッシュ均衡(あるいは単に均衡)であるといいます。
    • 例えば「高級ブランドメーカーがいくつか確立して一般メーカーと住み分けている状態」が均衡だというのは、「選択できるものが価格だけだとすれば、高級ブランドメーカーは価格を切り下げてもいま以上に利潤が増えず、一般メーカーも値上げをしてもいま以上に利潤が増えないので、互いに価格を変えようとしない」ということです。

最適反応

  • 均衡では、自分以外のプレイヤーの選択が今のままだとすれば、自分の選択はそれに対する「これ以上得する余地のない選択」です。このことを、自分の選択は残り全部のプレイヤーの選択に対する最適反応である、といいます。ナッシュ均衡が解概念であれば、その状況での各プレイヤーの経済合理的行動は、残り全部のプレイヤーの選択に対して最適反応をしてみせることです。

ちょっと待った。

  • 例えばある1ヶ月の各社の行動について考えるとしたら、価格を変える時期は月の初めでも途中でもいいはずだし、何度変えてもいいはずです。「行動の組み合わせ」といっても、それはいつの時点のことでしょう。そんな「組み合わせ」に意味はあるのでしょうか。→意思決定の時期と期間

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Last-modified: 2008-12-11 (木) 22:19:30 (5616d)