基本的に出来ません

  • 経済学の分析は需要関数・効用関数を所与として、そこから出発します。なぜ人がそれを需要するのか、どれくらい需要すべきかは、出発点以前にある問題で、手をつけることが出来ません。

あるんじゃないの

  • 過去のデータからパターンを取り出し、現在・今後の状況変化を加えて需要変化を予想する研究なら、ある程度できます。特に農産物で盛んです。しかしこの方法では、今までになかった製品の需要や、それが立ち上がっていく途中の様子を予想することはできません。社会人が持ち込んでこられるテーマで需要予測がらみだと、たいてい新製品なのでお手上げですね。
  • 「似通った」地域や「似通った」製品のデータを使って、「とにかく何か結論を出す」研究も、あります。ただ「似通っている」ことを判断する根拠は曖昧で、「当てにならない結論を押し付ける」危険があります。
  • 原油のように、世界の経済発展や景気によって需給が変動する財は、世界経済全体の動きが予想できれば需要動向を予想できます。そうした意味で、世界経済のモデリングに石油メジャーがお金を使っていると聞いたことはあります。ただそうしたモデリングが「複雑な割りに予想精度が上がらない」、もっと言えば「エコノミストの勘による予想と比べて、よく当たっているとも言いづらい」のが現状です。

大事だと思ってない?

  • ひとつひとつ正しさを確かめていく、科学的なスタイルに合わないから手がつけられないだけです。「パターン通りにやっても当たらない」ことは誰もが認めるでしょうが、そのパターンを見つけることこそが研究成果ですからね。
  • 例えば「ヒット商品の経済学的研究」はできないわけですが、「技術開発の経済分析」は盛んに行われています。研究開発への努力や研究組織作りにはパターンがあり、データを蓄積することもできるからです。

需要曲線一本がそんなにわからない?

  • わかりません。需要量は「実際にお金を出して買う量」であり、アンケートしてわかるものではないからです。実際に財布からお金を出すかどうか、観察できないといけません。お客それぞれの収入も、お客の顔ぶれも同じで、特定の品物の値段だけ違うふたつの時点を比較して、やっとふたつの点がグラフ上に取れるわけです。ふたつ取れること自体、めったにありません。メーカーは当然、新しいお客を増やそうとするでしょう?
  • もうひとつ困るのは、実際に観察されるのは需要曲線と供給曲線の交点だ、ということです。需要曲線が動かず、供給曲線だけが動けば、一本の需要曲線の上にある点ばかりが観察できますから、需要曲線の姿がわかります。でも一方が動くほど長い時間が経てば、もう一方だって動いているかもしれません。だとすると点と点を結んでも何も出てこないわけです。詳しくは計量経済学の本で、識別問題について勉強してください。

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Last-modified: 2008-12-11 (木) 22:19:30 (5617d)