望ましいa

利害関係の全体像をまず理解する

 経済学は希少性の学問である、というワルラスの言葉は有名です。経済問題には、いったん手に入ったらタダでは手放したくないもの(ヒマ、モノ、カネ)が必ず入っています。そのヒマ・モノ・カネの使い方を自由に決められる人が、それに使おうと納得し、望まない限り、お金は割り当てられません。

 政府が税金を集めるのは、何かに使うためです。国民、企業、あるいは「政府は○○すべきだ」と思っている無数の団体は、自分が望む用途になるべく多くの税金が割り当てられることを望むでしょう。人の欲にも、人の望みにも、限りはありません。「望ましい○○政策」への政府支出を増やせば、あなたが注目していない他のすべての公共支出のどれかを削らなければなりません。政府が税、あるいは社会保険料や国民の義務を増やせば、個人や企業が使えるヒト・モノ・カネは減ります。個人や企業は、なにかの用途への支出を切り詰めなければなりません。この話がピンと来ない人は、機会費用トレードオフについて復習してください。

 企業が資金を(株発行であれ借り入れであり)調達しようとするとき、資金の出し手は、自分のお金をこの企業にこの条件で使わせるか、他の借り手に使わせるかを考えます。(利払いを含んだ)利益が上がらなければ、借り手が高い利子・配当を払うことはできません。利益を増やす提案なしに、企業や団体に新たな支出をさせようとすれば、今までの支出のどこかを削る必要があります。当然、「それは望ましくない」と反対する人や部門が出ます。

 それが「誰にとって」望ましいのか意識しなければ、反対者や無関心な人々を説得する出発点に立てないだろう、と私(並河)はよくコメントします。例えば消費者の利益になる値下げや保証範囲拡大を、納入業者の利幅を削って実現するよう完成品メーカーが提案したら、納入業者はどう応じるでしょうか。

 利害関係の全体像をまずとらえなければ、提案の実行前と実行後で誰にどう損得が生じるかわかりません。その損得を整理することが、まず通るべき出発点であることが多いのです。

参考 組織の多目的性


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Last-modified: 2008-12-11 (木) 22:19:33 (5616d)