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 以下の趣旨説明は並河が勝手に思っていることで、埼玉大学経済学部の公式見解ではありません。公式会議で決めていると100年ほどかかりそうなので、勝手にぶつぶつ言っているとご理解ください。

 埼玉大学経済学部は私が就職してから15年ほど、ほとんど一貫して「カリキュラムの自由度を高めるのはいいことだ」という路線を突っ走ってきました。この間に新たに加わった必修科目はプレゼミくらいのもので、それも多くのプレゼミの中から選んでもらうものですから、実質的に選択必修です。

 これではさすがに「埼玉大学経済学部卒業生は、いったい何を最低限身につけていますか」と世間から尋ねられたときに、答えるのが難しくなってきました。学生の皆さんはよく誤解されているのですが、私たちにとってのお客様は、少なくとも昼間主コースの学部学生に限って言えば、学生の皆さんではありません。運営費交付金を頂く政府や、授業料を払ってくださる父母の皆様がクシャミをすれば、私どもは風邪を引きます。私どもが説明責任を負っているのは、まず何よりもこうしたスポンサーやクライアントであり、そうした方々はどうやら、世間に受け入れられるしっかりした社会人を育てることをお望みです。じゃあ埼玉大学経済学部はどんな人材を育てているのか、と尋ねられて、答えられないのはマズイのです。本当に。私たちにも、おアシを頂いただけの仕事をしたい、という思いはあるのです。

 カリキュラムの体系性を維持するためには、いろいろな方法があります。専任教員同士が本気で路線闘争をやって、人事ポストの奪い合いによってカリキュラムの体系性を高めるのは、ひとつの方法です。しかし私たちは、カリキュラムの自由度を一生懸命高めてきたこの年月、それなりにそれを正しいと思ってやってきたのです。いろんな教員がいることがいい卒業生を育てる、と思ってやってきたのです。あまりマジメに同僚を撃とうとはしなかったのです。それはたぶん、生産的なことでした。例えば私たちは、大学院で複数指導教員制を敷いています。指導教員同士で意見が合わないこともあります。そういうときは本気でケンカになります。私たちの力不足で、学生さんにとって必ずしも幸せでない結果を生むこともありましたが、導入すら進まない同業他社様もあるのです。紙の上の体系性を確保するために暗闘するより、多様性を認めつつ協力できるところを協力してきた私たちは、ずっとましだったろうと思っています。

 経済学部卒業生の共通ラインをそろえるために、私たちは履修フローチャートにもっとたくさん線を入れたり、科目の名前を入れ替えたりする代わりに、新しい必修科目を3つ立てることにしました。「経済学」「経営学」「法学」です。どの学科に属するにも、これらは必修です。だから例えば「経済学」は、経済学科に進まない人にも役に立つように、中身を工夫しなければなりません。例えば社会人としてどこにいっても役に立つ基本的な発想。ひとと話を通じさせるための、ボキャブラリーの貯金。そういったものをどう詰め込むか、みんなで話し合うことにしました。もちろん、そうした話し合いをどれだけ根気良く続けて行けるかが、この科目の成功不成功を分けるのです。それは、科目の名前を付け替えて中身について知らん振りを決め込むより、手間のかかることで、教育として意味のあることなのです。きっと。

 例えば私は、上に書いたように、基本コンセプトを伝えることが何より大事だと会議で言いました。いやいやもっと基本的に、言葉を覚えて使えるようにしなきゃだめだよ、という先生もいました。もちろん一定の妥協は成立しましたが、細かいところは、実際に授業をしながら、話し合いながら、決まってゆくのだろうと思います。

 しかしさすがに、いきなり新しい必修科目にこのような重要な役割を持たせて、果たして円滑に講義が進むのか、私たちも自信が持てませんでした。それで経済学科では、1年早く実験的に、教員有志で「経済学」をやってみることにしました。大学にとっては大変な時期ですが、いろいろなことが試せるこの状況を、並河はそれなりに楽しく思っていますし、そうした試行が皆さんのお役に立つよう願っています。


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Last-modified: 2008-12-11 (木) 22:19:26 (5691d)