限界費用
限界費用は「経済学らしい」考え方の焦点 †
- 限界費用と機会費用がわかれば、経済学はわかったようなものだ、と私(並河)は学生のころ言われました。なぜこれが重要なのか、いくつか理由があります。
ふたつの選択を比較できている †
- 限界費用がイメージできる人は、ふたつの選択肢の費用・便益を比較する、費用便益分析もできるはずです。「n個生産」と「n+1個生産」というふたつの選択肢で、費用差が意識できているからです。便益差はこの場合、1個から得る収入、つまり価格です。
連続的な選択肢がイメージできている †
- 経済的な選択肢は「右か左か真ん中か」といった離散的なものもありますが、たいていそれは人が一生懸命問題を整理したあと残ってくるものです。ごちゃごちゃした現実問題には、「販売価格をいくらにするか」といった、中途半端な選択がいくらでも出来る'連続的な'選択肢があります。
- 現実問題から、その問題での限界費用をイメージできる人は、すでに頭の中で問題を自分なりに整理・単純化しているはずです。「微分して求める」限界費用を現実世界に応用するためには、それは当たり前のようでも大切です。
限界費用は利潤最大化のために知る必要がある基本的な数字である †
- 企業が多くの(あるいは有力な)ライバルを持ち、市場で通用している価格が自分の行動だけでは上がりも下がりもしないとき、自分に決められるのは生産量だけです。
価格>限界費用ならもう1個作ったほうが得
価格<限界費用ならもう1個減らしたほうが得
- なのですから、価格=限界費用のとき以外は「もっといい選択肢がある」と考えてよいでしょう。だから完全競争市場では、「価格=限界費用」が利潤最大化条件です。完全競争市場でなくても、利潤最大化のために限界費用は重要なデータです。
意思決定の時点や対象期間が意識できている †
- 経済合理的行動は、意思決定の時期と期間が変わると、それだけで変わってしまうものです。限界費用を計算するとき、自然に可変費用と固定費用の範囲を意識することになり、どの時点から時点までの行動を考えるのか、自分で意識的に決めることになります。それは分析者が自分で決めるものだ、という理解が大事です。
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